文化講座

第 7回「写実を超えて」 細川佳成 氏

2012-05-08

「CG時代の創造を探る」 [美術家]細川佳成 氏

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冒頭に素晴らしいCGを上映、細川さんは「難しい描写も可能なCG時代に、アーチストはどんな表現が可能なのか」と自問。素朴にお話頂き、講座は終始あたたかな人間味溢れるものでした。

第7回「サルーテ文化講座」は5月18日、イベントホールに美術家・細川佳成さんを迎え『写実を超えて』と題して行われました。冒頭に素晴らしいコンピューター・グラフィック(CG)を上映して、細川さんは「難しい描写も可能なCG時代に、アーチストはどんな表現が可能なのか」と自問します。この疑問は芸術家のみならず、バーチャル空間に生きる私たちの課題ともいえましょう。参加者は約40人。

細川さんは1962年(昭和37)、東大阪市生まれ。生まれつき声帯が弱くて、しゃべるのが苦手。12歳で鳥取市に移住すると、こんどは大阪弁が恥ずかしく、そんな心を救ったのがマンガでした。鳥取工業高校では陸上の中長距離選手になり、その時に走る自分と時間との「ずれ」を感じます。思うようにならない自分の速力と時間との関係は、私たちも経験しますが、この「ずれ」はのちの細川作品の重要なカギを握ります。

絵画に目覚めた細川さんは、画家の山本恵三さんに師事して「空気を描きなさい」と教えられ、大阪芸術大学では「線一本の厳しさ」を痛感します。そして並居る自信家の仲間たちに圧倒された頃、自作のエスキース(デッサン)が認められ、授業で使われて「宇宙がビッグバーンでいまも広がり続けているくらい」の衝撃と自信を得ました。

細川さんは行動展で数々受賞し、現在は会員です。1990年代の作品は、山陰の古代神話を描く『国引き』『大黒』や、郷土の祭りをテーマにした『しゃんの音』など。非日常の祝祭を舞台に「時間の向こう側」を意識して、風土色の強い作品を描きました。2004年の行動賞受賞作『森に入った蝶屋の知人』は、自然に息づく生き物や草の匂いをイメージして、ものの気配と人間との対話を試みています。

現在は倉吉北高校の教師として生徒を指導しながら、挑戦しているのが平面に立体を加味した『正義の仮面』や、コンピューター・ウイルスを描く『スパム』など、現代社会が抱える問題をテーマにした作品です。参加者から活発な意見が相次ぎました。

「中央に対抗するために、わざと画面を汚して土俗的にしたのか」「絵画の立体はあくまでも平面に閉じ込めるべきではないか」「画家にとっては鳥や花も心のたくわえだが、細川さんの『写実を超えて』とは自分にとって本当のこと、大切なリアリティーや真実の追求だ。絵を見る時は何が描いてあるかではなく、その本当を感じたい」など。次回は7月20日、作家の須崎俊雄さんが講師です。


■細川佳成 氏のプロフィール
◎1962(昭和37)年、東大阪市生まれ。小学6年の73年、家族と鳥取市へ移住。鳥取工業高等学校を経て、84年に大阪芸術大学美術学科卒。デザインの仕事に関わりながら、主に行動展で発表。個展も積極的に開く。

◎1997(平成9)年、全関西行動展に初出品して、寄託賞を受けたのを皮切りに、同美術賞を受賞。翌98年に行動展で奨励賞、次いで会友賞を受賞。題材は山陰の「神話」や郷土の「祭り」など、非日常の祝祭がテーマ。「時間の向こう側」を意識して、風土の霊気や群衆の精気が渦巻く時空間を熱っぽく描く。

◎2004(平成16)年、第59回行動展に出品した『森に入った蝶屋の知人』が、最高賞の行動美術賞を獲得する。会員に推挙され、文化庁選抜展にも推薦される。作品は奥深い森を舞台に、草の匂いや生き物の物音などを形象化して、蝶の羽をコラージュするなど、豊かなイメージで自然と人間の対話を試みる。

◎社会の事象にも反応するが、直接的な風俗描写は廃して、アートとしてのイメージを重視。近年はコンピューター万能に対して、平面に立体を加える方法を探り、教育現場に立つ経験も生かして新たな感性に磨きをかける。川上奨励賞受賞。松柏学院・倉吉北高等学校美術教諭。(角秋)

 

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