文化講座

第25回「自然によりそって」 森田しのぶ 氏

2015-11-20

自然により沿ったモノ作り、絵画は美的ではなく奥に潜むモノを描く。

[デザイナー・洋画家]森田 しのぶ 氏

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 平成27年11月20日午後6時30分からサルーテで、第25回『楽しく真剣!「サルーテ文化講座」』が開催されました。司会の角秋勝治氏の講師紹介を経て、デザイナー・洋画家・森田しのぶ氏の講演がスタート。小学3年で始めた華道・茶道。大阪・天王寺で見た、赤テントのアングラ芸術等が大きく影響している。自然に沿い、シンプルで、身体に優しいものを追及。幼少時代からの写真と作品を織り交ぜながら投影、多くの聴講者の前で、熱く・にこやかに絵画とファッションの世界についてお話をされました。参加者は85名。

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講師の森田 しのぶ 氏

 私は八頭郡八頭町生まれです。
幼い頃から野山を駆け回る活発な、元気のよい子供でした。
 元気が良すぎたのを母が心配したのか、小学3年生の頃より華道・茶道の習い事に、母と一緒に通いました。今思えば、この経験が絵画やファッションに大きく影響しているのではないかと、時々思い浮かべることがあります。
 私は、小学校の頃から絵が好きで、素敵な先生と巡り会い、誉められたことで一生懸命取り組むようになりました。中学校時代には、既に美術の方面に進みたいと思っていました。
 中学・高校を経て、大学時代には大阪で1人暮らしとなりましたが、都会の生活に中々馴染めませんでした。入学して半年、友達が出来、その後面白い仲間が集まり、音楽、芝居、映画、美術館等、様々な所に足繁く通いました。今になれば私の大きな宝物となっています。因みに、私が下宿していました隣室の人は、ツィストのボーカル・世良公則さんでした。サイン貰っておけば良かった。

 昭和50年、大阪・天王寺公園。赤テント「劇団・状況劇場」を見に行きました。熱気がムンムンとし、汗が飛び散る狭い空間で、根津勘八、小林薫が演ずる劇を見て、強烈な印象を脳裡に焼き付けました。それがアングラ芸術に興味を持つ切っ掛けとなりました。
 特に土方巽の「暗黒舞踏」は強烈にイメージが残っています。私は、大地が蠢く、生命の誕生を感じました。美しいのではなく、奥に潜むキラット光る意識。無駄な物を削ぎ落して全てを曝け出す、そこに本当の美しさがあると感じました。
 土方巽、大野一雄に触発され、見えない物を意識して表現する、私の作品の発端です。
 渋澤龍彦、イギリスのフランシスコ・ベーコンの作品にも触発されました。2年程前、東京で、「フランシスコ・ベーコン」の作品展が開催されました。その折、ベーコンも土方巽に影響を受けたと知り、ベーコンも私と同時代に影響を受けたと思う、胸がドキドキしました。
 大学を卒業して帰郷。23歳で結婚。もっと絵を描くつもりだったのですが、3人の子供にも恵まれ、10年間良妻賢母の時を過ごしました。
 10年後、「風アフター1945」を結成するので、仲間に入らないかと誘われました。10年間も筆を握っていないので不安でした。特に、展覧会には、100号の作品を3作出品というのは、大きなプレッシャーでしたが、自由美術会初入選。以後、新人賞、佳作賞等を頂けるようになり主人も喜んでくれました。
 作品を描けるようになって数年が経った時、主人が経営している会社のブティク部門を任されました。子供も大きく育ち、私も働くことになりました。今思うと、県展、市展、自由美術協会など年5回の展覧会があり、目まぐるしく毎日必死で生きていました。
 ブティック部門の優秀なスタッフにも恵まれ、少しずつお客様のニーズに合う作品作りが要求されてきました。私が企画・デザインしたのが切っ掛けで、その後高島屋の通販、グンゼ産業のデザインを手掛けるようになりました。それが、ファッション業界に入った切っ掛けです。私自身も嫌いではなかったので、自然な形でファッション業界に入れました。

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土方巽の「暗黒舞踏」に大地が蠢く、生命の誕生を感じ、無駄な物を削ぎ落した、本当の美しさを見た。

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⾃然に拘ったシンプルなデザインの「SHINOBU」ブランドとサルーテ古⺠家とのコラボ。

 仕事にも慣れ充実した日々を過ごしていた03年、経済産業省からNYのファッション・コーテリー(全米最大のファッション展示会)の参加案内があり、「SHINOBU」ブランドで出品しました。
 何をどうすれば良いのか判らない。私が求める日本の生地を探しに日本全国を歩きました。生地と染色に拘り、「シンプルで直線、身体に優しい」をテーマに商品を制作しました。現在は1つの展示会で100アイテムを制作しますが、当時は20アイテム程度でした。不安が一杯で何も考えられない時もありましたが、出展初日に沢山のバイヤーが来場され、売れたんです。
 04年には、イギリスのピア展で発表。また、日本でもデビュー。07年には台湾でも展示会を行いました。いいことばかりではなく、売れない時期もありました。我武者羅に作品を作り、売れるのは20アイテムの内、半分くらいの時もありました。
 現在100アイテム作れるようになつたのは、すべて優秀なスタッフのお陰だと感謝しています。
いつもいつも不安ばかり、国内で4回(3月・5月=冬物、9月・11月=夏物)の展示会を行うのですが、その間に絵を描いてきました。
 皆さんは絵画とファッションは別物のように思われますが、私の中では、絵画は平面、ファッションはオブジェ的要素があり、ハコモノ的な考え方をしています。
 私は、洋服のデザインを考える時、一つの画面の中にどうフォルムを決定して行くかから始めています。ファッションと絵画の違いは、ファッションは1人では出来ないところ。様々な人から人へと繋ぎ一つの作品が完成し、そして観賞する人がいます。
 洋服とは様々な工程があり、どれ一つ抜けても洋服にはなりません。だからこそ一つひとつの作品が温かく優しく身体を包みこんでくれるのです。人として一番大切なことは、優しくなれること。だから洋服には大きなエネルギーがあります。洋服は、切るだけの物ではなく、心の必需品だと思います。
 最後に今「柿渋」に拘った作品を追及しています。柿渋は600年くらい前からあり、漁師さんの網等にも使われていました。鳥取の西条柿の青柿を使って「柿渋」を作っています。
先人達が残してくれた知恵を大事にして行かなければならない。もっと自然を大切にしていけたらと思っています。
 自然に沿った拘りのモノ作りを。デザインは自然・シンプルを追及して行きたいと思っています。

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渋澤龍彦・フランシスコ・ベーコンの作品に触発された。ベーコンも土方巽に影響を受けていたとは、うれしい。

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NYのファッション・コーテリーに参加、不安で何も考えられない時もあったが、出展当日、売れたんです。

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土方巽・大野一雄に触発され、見えないモノを意識して表現をするのが私の作品の発端となった。


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人として一番大切なことは、優しくなれること。洋服には大きなエネルギーがあり、心の必需品なのです。

■森田 しのぶ 氏のプロフィール

大阪芸術大学卒。1990年、自由美術展に初入選。以後、新人賞、佳作賞、靉光賞など受賞。

1996年から婦人服の販売をはじめ、高島屋、グンゼなどのデザインを手がける。

2000年、自由美術協会会員推挙。以後、県内外で個展、グループ展を開く。

2001年、婦人服で絵画表現をするため染色を研究。翌年ブランド「SHINOBU」を立ち上げ。

2003年、世界最大のファッションショーであるNYコ―テリーで「SHINOBU」秋冬を発表。

2004年、ロンドンのエージェントにより、ピア展で連続発表。日本でもデビュー。

2007年、台湾デビューも果たす。翌年、ファッションショーを開催。2009年、日本各地でも本格的に発表。

2010年 「柿渋染め」プロジェクトを立ち上げ。鳥取産西条柿の青柿で渋液を作り、綿染め、紡績、織り、加工製品を展開。

2011年、東京、大阪、札幌、福岡で展示会。以後もギャラリーあんどうなどで発表。

川上奨励賞。

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