文化講座

第3回「書のこころ」 柴山抱海 氏

2011-07-15

「日本のことば、文字をたいせつに!」 [独立書人団評議員]柴山抱海 氏
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「書の歴史」、「私の書」を中心に約1時間40分の講演がありました。書との出会いや巨匠手島右卿の思い出、「山陰書人社」の意義、国内外での展覧会を通し、古法を今に甦らせた「現代書」の魅力を語って頂きました。
参加者は100余人、講師の人柄が率直に溢れ出た楽しいひと時となりました。

柴山講師は3500年の書の歴史をたどり、自作も交えながら講演。
「歴史はえらい人だけのものではない」と延べ、心のありようや感動でお互いが通じ合えると、書の世界へ誘いました。ローマ字は輪郭だが、漢字には意味を伝える「指示」や、形を伝える「会意」などがあり、そこに西洋にはない「文字学」という深い学問が成立つと強調。

書体には古代に亀の甲に書いた「甲骨文」や、青銅器に書いた「金文」の篆書(てんしょ)があり、漢の時代に入ると木や竹に書いた「木簡・竹簡」が登場する。そこで「楷書」「行書」「草書」が生まれ、漢代に漢字の書体や書風は完成された。

これら古典の成立ちを理解しないと、書の世界に入っていけない。だから私は、日本の空海・最澄・嵯峨天皇や、顔真卿ら中国四大書家の臨書を徹底的に繰返し、その筆法や精神の研鑚に努めた。書には形象・音学性・リズムなど、あらゆる要素がある。それがなければ単なる意味に終り、意味だけが目的なら印刷された活字でもよい。

私は「現代書」の巨匠といわれる、手島右卿先生(「現代の三筆」、文化功労者)に師事した。現代書とはいま話した古典の基礎にあり、そこにいま生きている息吹を吹き込む書のことである。呼吸と墨継ぎ、時間のなかで、「時空間」も意識される。スキーも止まる技術が必要なように、「圧」を抜くことも大切だ。

最後に伝えたいのは「日本の言葉や文字をぜひ大切にしてほしい。文字を疎かにすれば、国が亡びるからである。」と結びました。


■柴山抱海氏のプロフィール
◎1941年(昭和16)東伯郡泊村(現湯梨浜町)生まれ。幼時から書に親しみ、高校時代に全国書道展文部大臣賞を受賞。60年東洋大学文学部国文科に入学、「現代書」の巨匠・手島右卿に師事する。64年から40年間、県立鳥取東高校教諭。青谷町の弥勒寺住職。

◎独立書人展を中心に活躍し、特選・奨励賞・会員賞を獲得。毎日書道展毎日賞、読売書道展優秀賞など受賞。雄渾で熱気のこもる濃墨や、生新なイメージの淡墨が高く評価される。69年に「山陰書人社」を結成し、古典の臨書や少字数書を世に問う。

◎企画運営も手がける。「全国学生比叡山競書大会」「鳥取書道代表十人展」や、東京の「放楠会書道二十人展」「日本象書会展」、全国公募展「放哉を書く」にも関わる。

◎国内外の個展も多い。76年、ハワイ州ホノルル展。86年に中国の北京や石家荘でも開き、西安美術学院客員教授に招聘され、「日中書法交流協会」を設立し会長に就く。ユニークな「墨佛」創始展を、宝林堂ギャラリー・栄光舎・東京・比叡山延暦寺で開く。県立博物館、県民文化会館、あおや郷土館でも大作を発表。
独立書人団評議員、毎日書道展審査会員。鳥取書道連盟会長、県書道連合会会長、市教育委員長。県教育表彰、市文化賞、県文化功労賞を受ける。著書も多数。

 

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